取引先の訃報を受けて、上司から「供花、手配しといて」と頼まれたことはありませんか。
お祝いの花なら何度か贈ったことがあっても、弔事の花となると勝手がまるで違います。
この記事では、供花の手配を初めて任されたおっさんが、事前に確認したこと、宗教ごとの違い、相場や名札の書き方を調べ、最終的に白い胡蝶蘭を選んだ経緯をまとめました。
迷ったら、まず遺族と葬儀社に確認する。
大事なのはそこでした。
目次
供花係は、ある日いきなり回ってくる
胡蝶蘭を育てるようになって数年、職場では「花に詳しい人」扱いされるようになりました。
これが思わぬところで効いてきます。
金曜の夕方、部長からの一言
その日は金曜の夕方で、図面の修正をやっつけて帰ろうとしていたところでした。
長年お世話になっている協力会社の元社長さんが亡くなったと連絡が入り、部長がこちらを振り向いてひと言。
「君、花に詳しいよな。供花、手配しといて」。
祝い花の胡蝶蘭なら、送別会や異動祝いで何度か手配したことがあります。
ところが供花は初めてでした。
育てるのと贈るのとでは、求められる知識がまったく別物なんですよね。
調べて分かった、確認事項の多さ
とりあえずスマホで調べ始めて、すぐに青ざめました。
宗教によって使えない花がある。
名札の書き方にも決まりがある。
しかも届ける期限がかなり早い。
機械設計でいえば、仕様書を読まずに部品を発注するようなものです。
あとから「その仕様じゃ使えません」と言われても取り返しがつきません。
弔事は特にやり直しがきかないので、手を動かす前に確認すべきことを洗い出すことにしました。
注文する前に、まず確認すべき3つのこと
供花の手配でいちばん大事なのは、花選びより前の確認作業でした。
ここを飛ばすと、どんなに立派な花を贈っても遺族の負担になりかねません。
調べものの軸にしたのは、胡蝶蘭専門店フラワースミスギフトさんのコラム「供花のマナー完全ガイド|知っておきたい宗派別の違いや手配方法」です。
事前確認から宗教別の花選び、相場、名札の書き方、家族葬での判断まで一本にまとまっていて、手配の手順書としてそのまま使えました。
以下は、このコラムを手元に置きながら、おっさんが実際に確認していった順番です。
供花を受け付けているか
最初に見るべきは、訃報の案内に「供花・供物はご辞退いたします」と書かれていないかどうかです。
辞退の意向があるのに贈ってしまうと、遺族はお断りの対応や置き場所の手配に追われることになります。
近ごろ増えている家族葬では、この確認がいっそう大事です。
案内に何も書かれていない場合は、遺族か葬儀社に直接聞くのが確実だとされています。
今回は案内に葬儀社の連絡先があったので、そちらに電話しました。
「ご厚志辞退」とあれば供花を含めたお供えを控える、という点も覚えておくと安心です。
宗教・宗派と届け先
次に確認したのが宗教です。
仏式か神式か、キリスト教式かで、ふさわしい花も飾り方も変わります。
葬儀社に聞くと、今回は仏式とのことでした。
あわせて、斎場の住所と受付時間、葬儀社以外から花を届けてよいかも確認しました。
斎場によっては、祭壇の統一感を保つために外部からの花を受け付けないことがあるそうです。
花屋や通販で頼むなら、この確認は欠かせません。
締め切りは通夜当日の午前中
いちばん驚いたのが期限でした。
供花は、通夜が始まる前に祭壇の周りに飾られているのが理想で、通夜当日の午前中までに届くよう手配するのが基本です。
間に合わない場合でも、遅くとも葬儀・告別式の前日までには届けたいところです。
金曜の夕方に話を聞いて、通夜は日曜の夕方。
実質、動けるのは土曜の一日だけでした。
納期から逆算して段取りを組むのは仕事と同じですが、ここまで短納期の案件はなかなかありません。
宗教で変わる花選び、胡蝶蘭が強い理由
確認がひと通り済んだところで、ようやく花選びです。
ここで胡蝶蘭好きのおっさんとしては、少し嬉しい発見がありました。
仏式・神式・キリスト教式の違い
宗教ごとの違いを、ざっくり表にしておきます。
| 宗教 | 定番の花 | 注意点 |
|---|---|---|
| 仏式 | 菊、百合、胡蝶蘭、カーネーション | 四十九日までは白が基調。トゲや毒のある花は避ける |
| 神式 | 仏式とほぼ同じ | 白のほか黄色も使われる。地域差に注意 |
| キリスト教式 | 百合、胡蝶蘭、白いカーネーション | 菊は使わない。名札は付けないのが通例 |
仏式では、四十九日までは白一色でまとめる「白上がり」が原則とされています。
バラのようにトゲのある花や、彼岸花のように毒のある花はふさわしくありません。
キリスト教式では菊を使わず、花籠の形で故人の自宅に贈るのが一般的だそうです。
花粉と香りが少ないという、地味な美点
表を見て気づいたのが、どの宗教の欄にも胡蝶蘭が入っていることでした。
供花に胡蝶蘭が選ばれやすいのには、ちゃんと理由があります。
胡蝶蘭は花粉や香りが少なく、祭壇や参列者の服を汚しにくい花です。
百合は見栄えがする反面、花粉が服に付くと落ちにくいことで知られています。
そのうえ胡蝶蘭は花持ちがよく、1〜3か月ほど咲き続けるので、葬儀が終わってからも遺族の手元で長く飾ってもらえます。
部品選びで「性能は同じだが、周りを汚さずメンテナンスも楽」という候補があれば、設計者は迷わずそちらを選びます。
供花としての胡蝶蘭は、まさにそういう存在でした。
白い胡蝶蘭なら宗教を選ばない
もうひとつ大きかったのが、白い胡蝶蘭なら宗教を問わず選びやすいという点です。
宗教が分からない段階でも、白い花を選んでおけば大きな失敗にはなりにくいとされています。
今回は仏式と分かっていましたが、最終的に白の大輪、3本立ちを選びました。
育てている身としては、自分が毎朝世話をしている花が、お世話になった方の最期を見送る花になる。
そう思うと、手配する手にも少し力が入りました。
相場と名札、会社名義ならではの迷いどころ
花が決まっても、まだ終わりません。
会社として贈る場合は、金額と名札でもう一段迷うことになります。
会社名義は1万5,000〜3万円が目安
供花の相場は、形式と故人との関係でかなり幅があります。
アレンジメントなら7,500〜15,000円、胡蝶蘭の鉢植えは10,000〜30,000円が目安です。
関係性で見ると、友人・知人や会社関係の個人名義なら7,500〜15,000円。
会社名義や部署名義になると、15,000〜30,000円が目安とされています。
今回は会社名義だったので、部長と相談のうえ、この範囲に収まる3本立ちにしました。
迷ったら同じ立場の人と金額をすり合わせておくと、あとで気まずくならずに済みます。
名札は「御供」と贈り主の名前だけ
名札(立札)には、「御供」の文字と贈り主の名前を書きます。
ここで意外だったのが、故人の名前は書かないというルールでした。
お祝いの胡蝶蘭は贈る相手の名前を入れることが多いので、つい同じ感覚で書きそうになります。
個人名で贈るならフルネームが基本で、名字だけはマナー違反とされます。
役職者として贈る場合は、肩書きも併記します。
今回は「御供 〇〇株式会社 代表取締役社長 △△ △△」の形にしました。
連名なら4名以上は「一同」
部署の有志で贈る場合も考えておきました。
2〜3名なら右から目上の順にフルネームを並べ、4名以上なら「〇〇株式会社 設計部一同」のようにまとめるのが一般的です。
なお、祭壇のどこに飾るかを決めるのは遺族や葬儀社です。
贈る側が「この位置に」と指定するものではありません。
取引先との関係を気にして、ついそこまで口を出したくなるのがサラリーマンの悲しい性ですが、ここはぐっとこらえるところです。
手配してみて、やらかしかけたこと
最後に、実際に手配してみて冷や汗をかいた話も残しておきます。
同じように供花係を任された方の参考になれば幸いです。
「お供え用」と伝え忘れかけた
土曜の朝、胡蝶蘭を扱う店に電話したときのことです。
いつも祝い花を頼む調子で話し始めてしまい、途中で「ラッピングは何色にしますか」と聞かれて我に返りました。
花屋や通販で注文するときは、弔事用の供花であることを最初にはっきり伝える必要があります。
祝い用の華やかなラッピングで届いてしまったら、取り返しがつきません。
白を基調にした落ち着いた仕立てにしてもらい、立札も弔事用の書式で作ってもらいました。
香典と供花、両方いるのか問題
もうひとつ迷ったのが、香典との関係です。
香典を渡す場合、供花は必ずしも必要ではなく、香典だけでも弔意は十分伝わるとされています。
ただ、会社として特にお世話になった方なので、今回は香典と供花の両方を用意しました。
供花を連名で贈った場合でも、香典は個々に用意するのが一般的だそうです。
このあたりは社内の慣例もあるので、総務や上司に一度確認しておくと安心です。
まとめ
供花の手配で大切なのは、花選びより先に確認を済ませることでした。
- 訃報の案内で、供花の辞退がないかを確認する
- 宗教・宗派、斎場の住所、外部からの花を受け付けるかを葬儀社に聞く
- 通夜当日の午前中までに届くよう、逆算して手配する
- 迷ったら、花粉や香りが少なく宗教を問わない白い胡蝶蘭が選びやすい
- 名札は「御供」と贈り主の名前。故人の名前は書かない
日曜の通夜で、祭壇の脇に白い胡蝶蘭が並んでいるのを見たとき、ようやく肩の力が抜けました。
帰り際、部長に「助かったよ」と言われたのも、まあ悪い気はしません。
胡蝶蘭を育てていると、祝いの場で喜ばれる花だと思いがちです。
でも、静かに故人を見送る場面でも、この花はちゃんと役目を果たしてくれます。
いつか自分が供花係を任されたときのために、この記事を頭の片隅に置いておいてもらえたら嬉しいです。
